名古屋高等裁判所金沢支部 昭和26年(う)444号 判決
原判示第三事実に対する原判決挙示の各証拠、就中、原審第一回公判調書中被告人の供述記載を検討すると、被告人は、原審公判廷に於て、本件昭和二十五年五月二十九日付起訴状による公訴事実、すなわち、「同人が、法定の除外事由なくして(一)昭和二十一年六月頃より昭和二十四年六月頃迄の間、刃渡約五四・五糎の日本刀一口を自宅長持中に隠匿所持していたものである旨の事実」及び「(二)昭和二十五年三月下旬より四月九日頃迄の間、刃渡約五三・四糎、三四・二糎、四一糎の日本刀合計二口を自宅に隠匿所持していたものである旨の事実」につき、該事実は、いずれも真実に相違がない旨の供述をしていることが明白であり、原判決は、刀剣の長さにつき、証拠なくして事実を認定したものでない。刀剣の長さは本件犯罪構成要件中の重要な部分であるとしても、罪体中他の部分に関する補強証拠が存在する以上、特に此の点につき、被告人の自白以外に特別の補強証拠を必要とするものではない。論旨は理由がない。
論旨第二点について。
原判決の擬律を検討するに、原審は、原判示第三の事実に対し、銃砲刀剣類等所持取締令附則第三項銃砲等所持禁止令第一条第二条を適用するのみで、同令施行規則第一条を適用していない。思うに、同令施行規則第一条は、其の第三号に、「刀剣類とは刃渡り十五糎以上の刀、匕首、剣、槍、及び薙刀を言う」旨定め、かくのごとく銃砲等所持禁止令を適用すべき刀剣類の範囲を限定することにより、本件犯罪構成要件の重要な部分を規定したものである。そうして見れば、同法条を適用しなかつた原判決は、法令の適用を遺脱したものとして、其の理由に不備があると言わなければならない。論旨は理由があり、原判決は此の点に於て破棄を免れない。